Iinterview

2026.6.18

海外事業の落とし穴は日本での成功体験にあり。メディックス台湾・岡氏が語る、越境マーケティングのリアルとアジア開拓の野心【ZEXTERS Career Interview Vol.1】

    取材・文:山田 重治(ZEXT Career)
    ※本記事は、2026年5月15日に行われたオンライン取材をもとに作成しています。

    ZEXT Career山田です。
    今回はZEXT Careerの新しい取り組みとして
    越境×新規事業でご活躍されている方を取材し
    発信していくエントリーになります。
    ZEXT CareerのHPにもページを特設して
    こちらのNoteと合わせて掲載していく予定です。

    記念すべき初回ゲストは、
    株式会社メディックス(MEDIX)の台湾拠点 総経理 岡裕太様です。

    大手広告代理店に全落ちしたという就活時代の挫折から、いかにして台湾市場の第一人者となり、2030年に向けたASEAN展開を見据えるまでに至ったのか。

    未開の市場を切り拓く「開拓者精神」と、逆境を乗り越えるためのマインドセットに迫ります。


    インタビュー本編
    ── 1. まずは岡さんのキャリアの原点について教えてください。大学時代から海外への意識は高かったのでしょうか?

    岡氏: 大学は語学に強い獨協大学に通っていました 。当時は「絶対に海外留学に行く」という強い目標を持っていたんです 。自分でTOEFLの要件を調べてアメリカ・カリフォルニアの大学へ1年ほど留学し、現地でマーケティングの面白さに目覚めました 。

    そこまでは順調そうに見えるかもしれませんが、帰国後の就職活動では大きな挫折を味わっています 。私はマーケティングのキャリアを歩むと心に決めていたので、総合広告代理店を上から順にすべて受けたのですが、4月、5月と進んでも内定が1つももらえませんでした 。6月の時点で完全に全落ち状態だったんです。

    そこから、どのようにしてメディックスへの入社に至ったのですか?

    岡氏: 6月の時点で、まだ募集が残っていたのが「デジタルマーケティング」の領域でした 。当時は2016年頃で、徐々にデジタルが加速し、やがてマス広告を追い抜いていくという過渡期です 。その中で、代理店の立場で働ける会社として縁があったのがメディックスでした 。
    当時は、思い描いていた華やかな総合代理店の世界とはギャップもあり、泥臭く毎日エクセルを回して数字を集計する日々でした 。しかし、結果的にはこれが最高の経験だったと思っています 。データをベースに物事を考え、思考し、アクションを起こすという、マーケターとしての強固なベースを新人のうちに叩き込むことができたからです 。


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    ── 2. その後、念願だった「海外」での事業立ち上げのチャンスを掴まれたわけですね。
    岡氏: はい。心の中ではずっと「いつか海外でチャレンジしたい」と思っていました 。国はどこでもよかったんです。

    チャンスが巡ってきたのは入社5年目の時でした。社内で海外事業推進室が立ち上がり、上司を含めたわずか3人のメンバーで、台湾への法人設立に向けた模索がスタートしたのです 。そして翌年の2020年、入社6年目のタイミングで駐在員として台湾へ渡り、現地法人を正式に立ち上げました 。

    入社6年目で海外法人の立ち上げを任されるというのは、まさに大抜擢ですね。現地での生活や仕事のスタートはいかがでしたか?

    岡氏: 生活面に関しては、台湾は非常に過ごしやすい環境でした 。日本語を話せる方も多く、日本食も豊富で、コンビニにATMがあるなど日本と変わらない習慣でストレスなく馴染むことができました 。
    しかし、ビジネス、特に「組織づくり」の面では、最初の3年間は本当に苦しい逆境の連続でした 。日本でやっていたマネジメントの手法が、現地で採用した台湾人メンバーには全く通用しなかったのです 。


    ── 3. 具体的に、マネジメントにおいてどのような壁にぶつかったのでしょうか?

    岡氏: メディックスという会社は、非常にボトムアップの文化が強い組織です。メンバーに「あなたはどうしたいの?」「何がやりたいの?」と問いかけ、自発的な意見を引き出しながら進めていくのが日本での勝ちパターンでした。 一方で、台湾の労働市場は明確なジョブ型が主流です。それぞれの役割と責任範囲がはっきりしており、与えられたミッションを高い精度で確実に遂行する、というプロフェッショナリズムが根づいています。これは台湾の強みでもあり、実際にメンバーは自分の担当領域で非常に高いクオリティを発揮してくれました。ただ、当初の私はそうした文化の違いを十分に理解できておらず、日本と同じやり方で「自由にアイデアを発散してほしい」と求めてしまい、期待していたアウトプットの形とうまく噛み合わない場面がありました。

    良かれと思ったボトムアップのアプローチが、現地では機能しなかったのですね。

    岡氏: そうです。当時の私はマネジメントの経験も浅く、そのギャップにうまく対応できていませんでした。結果として、指示を細かく出すマイクロマネジメントに陥ってしまい、組織がうまく噛み合わない時期が続きました。

    頭では「市場が違う」と分かっていても、心が未熟で、習慣として現地のスタンスにアジャストできていなかった。この組織づくりの難しさを肌で学んだことが、海外で事業を立ち上げる上での最初の大きな洗礼でした 。

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    ── 4. 台湾市場と日本市場では、プラットフォームや消費者の行動にも大きな違いがあるのでしょうか?

    岡氏: 面白いことに、取り扱うメディアやプラットフォーム自体は、日本も台湾もほぼ同じなんです。Google、Meta(Facebook / Instagram)、LINEが主流ですから、広告運用のテクニカルなノウハウはそのまま横展開できます。決定的に違うのは、消費者の「消費行動」と「コミュニケーションの捉え方」です。 良くも悪くも日本語には、少ない言葉や行間から意味を推測するという特徴があります。そのため広告コミュニケーションにおいても、商品やサービスの機能を直接的に説明するだけでなく、少ない言葉からその商品・サービスの便益=ベネフィットを想起させる表現が、消費者のマインドを動かしやすい。

    一方で、台湾の消費者はより実利主義的だと私は捉えています。広告クリエイティブにおいても、「いくら割り引かれるのか」「どんなキャンペーンなのか(1つ買ったら1つ無料、など)」といった、直接的で分かりやすいメリットの訴求が最も効果を発揮します。どちらが優れているということではなく、それぞれの市場で響くコミュニケーションの設計がまったく異なる、ということですね。

    なるほど。よりストレートなベネフィットが響くわけですね。行動パターンの違いについてはいかがですか?

    岡氏: 台湾は小さな島国ということもあり、店舗型のビジネスにおいて「近くの百貨店に行けば見たいものが一通り揃う」というパッケージ化された購買習慣があります 。
    日本でブライダルジュエリーなどを買う場合、事前に徹底的に情報を調べて店舗予約を入れ、男女で予定を合わせて訪問するのが一般的です 。しかし台湾では、わざわざ事前予約をせず、百貨店へ行ったついでにふらっと訪問して比較検討する人の割合が日本より圧倒的に多いのです 。
    予約(来店予約)をコンバージョン(KPI)の主軸に置いていると、この差を見落とします 。こうした現地の購買習慣に合わせてメディアプランや広告の機械学習の設計をアジャストしていくこと。これに気づき、仕組みを再構築するのには大変なエネルギーが必要でした 。


    ── 5. 台湾ビジネスにおいて最も大きな成果を挙げたエピソードを教えてください。

    岡氏: ブランド名は控えさせていただきますが、日本人なら誰もが知っている小売りブランドの案件を獲得し、大きく成果が残せたエピソードがあります。

    日本を代表する小売りブランドなので、弊社と同業の大手広告代理店もコンペに参加して提案を行うわけですが、私たちはデジタルエージェンシーとしての強みを最大限に生かした「Eコマース(EC)の売上最大化」1点のみに提案を絞り込み、どこよりも深いデジタル戦略を提示しました 。

    具体的には『ファーストフェーズでECの基盤を爆発させ、セカンド、サードフェーズで領域を広げて総合的にデジタルを支援する』という緻密なステップアップのシナリオを描きました 。

    結果これがバッチリとはまり、受注が決まりました 。実際の運用が始まると、ECの売上を従来の2倍に成長させ、広告の費用対効果も劇的に改善しました 。この成果が信頼を生み、コンペに毎年勝ち続け、取引5年目を迎える今ではデジタル領域全体のマーケティングを任せていただける信頼関係が築けていると実感しています。

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    ── 6. 今後、メディックス台湾としてどのような展望を描いていますか?

    岡氏: 短期的な目標としては、直近の3年間で、この台湾市場における「日系マーケティングエージェンシーといえばメディックスのグループだ」と誰もが認める、名実ともにナンバーワンの存在になることです。実はこのビジョン実現に向けた大きな一歩として、2025年9月に、元々パートナー企業であった「STAR TO ASIA社」をM&Aによりグループ化しました。
    これまではデジタルマーケティングを中心とした顧客支援でしたが、この統合により、日系企業が台湾へ進出する際の物流やリテール支援まで、一気通貫でサポートできる体制が構築できました。

    そしてその先にある2030年に向けては、この台湾で磨き上げた「日本の勝ちパターンを現地向けに変革するノウハウ」と新たな支援体制を引っ提げて、ベトナムなどのアセアン(ASEAN)マーケットへ横展開していくことを掲げています。アジアへ打って出る日系ブランドにとって、なくてはならない最適なマーケティングインフラとなるべく、私たちはまさに「第二の再成長フェーズ」として組織を拡大している最中です。

    最後に、これから「海外進出」や「新規事業立ち上げ」に挑戦しようとしている人へ、アドバイスをお願いします。

    岡氏: 一言で言えば、「逆境を楽しめる心の強さ」を持っているかどうかです 。
    海外ビジネスや新規事業の現場では、生活でも仕事でも、毎日のように想定外のトラブルが起きます 。その時に「なぜうまくいかないんだ」と悲観的になってしまう人は、正直に言って海外の厳しい環境を生き抜くのは難しいと思います 。
    ロジカルに問題を解決するスキルは大前提として必要ですが、それ以上に「まあ、海外だしこういうこともあるよね」と、トラブルすら盛り込み済みのエンタメとして笑い飛ばせるマインドが大切です 。不確実な世界へ飛び込み、未知の領土を自分の手で切り拓いていく「開拓者精神」と、逆境を前向きに楽しめる熱量を持った方と一緒に、これからのアジア市場を攻めていきたいですね 。

    本日のインタビューは以上になります。お時間頂き誠にありがとうございました。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    プロフィール
    岡 裕太(Yuta Oka)様 
    メディックス台湾 総経理

    2016年に株式会社メディックスへ入社し、デジタルマーケティングの強固な基礎を築く。2020年、入社6年目で単身台湾へ渡り現地法人をゼロから立ち上げ。日本と台湾の市場・文化の違いを乗り越え、大手リテール企業のEC売上を2倍にするなど数々の実績を上げる。現在は、台湾市場において「マーケティングと言えばMEDIX」と言われるブランドの確立、そして2030年以降のASEAN開拓という大きな野望を胸に挑戦の日々を送っている。

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    【編集後記】
    日本の安定した勝ちパターンを捨て、現地の文化や習慣を深くリスペクトしながら、実利に基づいた緻密な戦略で圧倒的な成果を出してきた岡さん。その姿勢からは、単なる「語学力」を武器にするのではなく、不確実な環境を楽しみながら道を切り拓く「ゼロイチマインド」の重要性が伝わってきました。越境キャリアとは、「国境を越えること」ではなく「前提を越えること」なのだと学ばせて頂きました。

    ZEXT Careerでは、このように地域や国境の枠を超え、自身のマーケティングスキルやビジネススキルを武器にグローバルで挑戦したい挑戦者の転職・キャリア支援を行っています。ぜひ私たちと一緒に新しいキャリアを描いていきましょう。

    企業情報
    企業名:
    MEDIX MARKETING TAIWAN CO., LTD.(美迪科思行銷股份有限公司)

    グループ企業:
    STAR TO ASIA CO.,LTD. (亞星通股份有限公司)、NITTAI International CO.,LTD.(日台通販國際股份有限公司)
    社員数:グループ合計 80名

    事業内容:
    デジタルマーケティング(WEB広告、広告クリエイティブ制作、LP制作、ウェブサイト運営)
    SNSマーケティング(SNSアカウント代行、インフルエンサーマーケティング、口コミマーケティング)
    マス・オフラインマーケティング(テレビCM、屋外広告、リテールメディア、ポップアップ、PRイベント)
    EC・D2Cマーケティング(ECモール運営代行、自社ECカート「CROS」、CRM)
    リテールマーケティング(販売代理、商品開発、店頭セールスプロモーション)
    海外進出支援(事業計画作成、販売許可/PIF申請代行、物流/倉庫サービス、フルフィルメント/在庫管理)

    【取材・お問合せ】
    インタビュアー:
    山田 重治(ZEXT Career)
    取材日時: 2026年5月15日
    取材形式: オンライン(Microsoft Teams)
    お問合わせ:agt@gl-navi.co.jp

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